英語のネイティヴスピーカー(母語話者)であっても、その説明が上手に出来るとは限らないことがあります。専門用語になりますが、英語に限らず言語に関する知識は、宣言的知識(declarative
knowledge)と手続き的知識(procedural knowledge)に分類されます。宣言的知識とは、言葉で説明できる知識のことで、例えば主語が三人称単数の場合は動詞の語尾にsをつける等です。手続き的知識とは、実際に何かが出来ることを指します。例えば会話やエッセイで三人称単数の動詞を実際に使えるのならば、この文法の手続き的知識があるということです。
日本の学校の授業では、このような文法ルールを最初に教えることが多いです。これは宣言的知識を教えていることになります。そして、ワークブックの問題などを通して、文法ルールを使える状態にもっていきます。これは、手続き的知識の獲得を目指しています。外国語が第二言語でその学習に取り組んでいる人は、宣言的知識はあっても、手続き的知識までは習得出来ていない場合が多いです。三人称単数の場合に動詞の語尾にsをつけることは分かっていても、実際の会話ではsをつけ忘れてしまうことはありませんか?これは宣言的知識はあっても、手続き的知識が追いついていないということになります。
その一方で、ネイティヴスピーカーは、手続き的知識は持っていても、宣言的知識に欠けていることが多々あります。現在完了進行形、過去完了進行形と未来完了進行形、それぞれの違いは何ですか?と尋ねて、即答できる母語話者は多くはありませんが、実際の会話では何の問題もなく、これらの文法を使いこなせます。これは宣言的知識はなくても、手続き的知識は持っているということを意味しています。
これは英語のネイティヴスピーカーに限った話ではなく、日本語でも同様です。日本人でも、”は”と”が”の違いを聞かれてすぐに答えることが出来なくても、実際の会話では何の問題もなく話せます。
どの言語に限らず、ネイティヴスピーカーは、手続き的知識は持っていても、宣言的知識は持ち合わせていないことが多いです。特別に、言語学や英語教育のトレーニングを受けた方なら宣言的知識を兼ね備えていることもありますが、英会話スクールの先生は、言語とは関係ない分野の大学を卒業して数日から一週間程度のトレーニングを受けただけで教壇に立つケースも珍しくありません。ネイティヴスピーカー=その言語の説明が上手、というわけではない為、第二言語としての英語を苦労して身に付けた経験がある非ネイティブから学習したほうが、的確かつ効果的に英語を習得出来る可能性があります。